カロテノイド(抗ガン食品として)
ベータカロチンは最も知られていますが、カロテノイド類は植物由来の化合物で、たとえばニンジン、アプリコット、カボチャ類にみられるように、オレンジ色、ピンクあるいは赤色など派手な色彩の植物に多く含まれています。微量栄養素として多くの特徴があり、病気にたいする抵抗力をつけるものと考えられてきました。まず、カロテノイドは抗酸化物質で、白内障や冠状動脈疾患の予防能力があるとされています。最近のアメリカにおける研究で、ベータカロチンは心臓発作を40%減らしたという結果が報告されています。しかし、ベータカロチンは抗酸化物質というだけでなく、免疫強化物質とも言われています。さらに、ガン細胞と正常細胞との間のコミュニケーションを改善する性質があり、ガン細胞の成長を抑制すると考えられています。
身体の特定の部位、たとえば胃、食道、喉、肺などのガン・リスクの減少と高カロチン食との関連を説明するのは、このガン細胞と正常細胞との間のコミュニケーション能力にあると思われます。しかしながら、認めなければならないポイントが1つあり、それはカロチンが多い食事とは、とりもなおさず果物と野菜が多い食事であり、こういった食事にはまだまだ他の治療に役立つ化合物が含まれています。
試験管テストでは、カロテノイドが培養したガン細胞を正常化する能力があることが認められています。従って、将来的にはカロテノイドがガンの予防のみならず、その治療にまで使われる可能性が期待されます。事実、カロテノイドは気管上部、口腔、消化管、などの、前ガン症状の進行の予防に用いられてそれなりの成果を挙げている例もみられます。
ベータカロチンと肺ガンとの関係はとりわけ複雑です。肺に蓄積されたビタミンと疫学的データはベータカロチンの大量摂取が肺ガンを誘発する可能性を示唆しています。ある条件下では、ベータカロチは親酸化性をみせます。その条件とは、まずベータカロチンの大量摂取と、酸素の集中およびその部位における組織の破壊であり、この条件を満たすのは喫煙者、それも、ベータカロチンを栄養補助食品として摂取する喫煙者です。これこそが、かの有名なフィンランドのATBCテストにおけるベータカロチンと肺ガンとの関係を説明するものと考えられます。
しかし、その条件を満たす喫煙者といえども、カロテノイドの心臓疾患予防効果を無視して良いという理由にはなりません。ましてや非喫煙者にとっては、カロテノイド補助食品の摂取を否定する理由はまったくありません。
その他のカロテノイドとしては、ルテインを考慮すべきでしょう。ルテインは心臓病に関する限り最も有力な栄養素であり、黄緑色の野菜、中でもケールに多く含まれています。
一方、乳ガンの予防に効果があるのはリコピンです。リコピンはトマトに含まれていますが、イスラエルでは、特にリコピンの含有量の多い品種の栽培に成功しています。今ではイスラエルでは、リコーペン(Lyc-o-Pen)という商標で健康食品店の店頭で販売されています。因みに、このリコピン強化製品を使って哺乳類の動物実験が行われ、その結果、ラットの乳ガンを減らすと同時に、ヒトの子宮ガンと乳ガンの予防についてもベータカロチンより良い結果であったといわれてます。
低温殺菌したトマト・ジュースもリコピンの栄養源として優れたものです。血中のリコピン濃度を上昇させることが確認されています。不思議なことに、生のトマトそのものがリコピン血中濃度を上昇させる働きは確認されていません。
最後に、健康もさることながら美容上のカロテノイドの効果について少々述べましょう。ベータカロチンを大量摂取した場合、皮膚の色がわずかにオレンジ色になります。時々、黄疸と間違われるケースがありますが、ベータカロチン摂取では黄疸のように眼球の白色部の黄変がありませんので、判別は容易です。ベータカロチンは1日当たり30ミリグラムの摂取で皮膚を紫外線から守ります。
クレイトン博士の「英国流医食同源」 ~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~(翻訳版)の内容を転載しています。
当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~』の内容を転載しております。