フード・インク (FOOD,INC.) ~長編ドキュメンタリ映画~
ごはんがあぶない
- 外国産食品(特にアメリカ産の鶏肉、豚肉、牛肉)が安いのはなぜ?
- 利益優先の巨大企業に支配される農業と食システムの危険な実態とは?
- 不衛生で劣悪な環境で飼育される家畜が食肉となり、スーパーに並べられる?
- 工業化した食品業界がもたらす問題と、それに対して私たちができること?
- 消費者である私たちが、自分たちで食の安心と安全を守るしかない!
映画フード・インク (FOOD,INC.)
- エリック・シュローサー(Eric Schlosser)/共同プロデューサー
- アメリカのジャーナリスト&脚本家、食に関する啓発記事を多数執筆
オックスフォード大学卒業(イギリス帝国史研究)
「ファストフードが世界を食いつくす(Fast food nation)」、「おいしいハンバーガーのこわい話(Chew on This)」等を著作 - ロバート・ケナー(Robert Kenner)/監督・プロデューサー
- アメリカの映画監督&テレビプロデューサー
- エリス・パールスタイン(Elise Pearlstein)/プロデューサー
- リチャード・ピアース(Richard Pearce)/撮影監督
- 第82回アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞にノミネート
農業は工業に変わってしまった
この50年間に食生活に生じた変化は過去1万年よりもはるかに大きい。消費者が持つ農業のイメージは古き良き時代のままだが、スーパーには今や四季を問わず豊富な食材が並んでいる。いつの間にか、農業は工業に変わってしまっていた。
「ファストフードが世界を食いつくす」著者のエリック・シュローサーは語る。「ひと握りの多国籍企業がフードシステムを支配している。業界の思惑は巧妙に消費者から隠されてきた。」
利益優先の巨大企業に支配される農業と食システムの危険な実態
"工業フードシステム"は、30年代のマグドナルドのドライブインから始まった。レストランの調理場に工業システムを導入したという点でその功績は大きく、熟練の調理人は不要となり、早くて安くて美味しい食事がいつでも食べられるようになった。買い手の巨大化は売り手の巨大化を求め、1970年代には牛肉産業大手5社が市場の25%を占めていたのに対し、今では大手4社が80%を占めるまでになっている。消費者の好きな胸肉の大きい鶏肉のため、従来の1/2の期間で2倍のサイズに育てられ、2,3歩歩くだけで足が折れてしまうブロイラーたち……。養鶏場はもはやチキンではなく、"製品"を作っているのだ。
農業においての変化はまずコーンから現れた。現在、アメリカの農地の30%はコーン畑。政府の援助により、実際のコストより安く生産することが可能になっているが、それは、穀物メジャー会社が大量に安く仕入れるためだ。コーンは様々な食品の原材料になっており、スーパーに並べられている商品の約90%の製品にコーンか大豆成分が含まれているという。その多くは遺伝子組み換えによる品種のものだがラベル表示義務はない。
そればかりか、コーンは家畜の飼料としても使用されている。ところが、もともと草を食べるはずの牛はコーンをうまく消化できないため、危険な大腸菌が発生しやすくなる。フンまみれの不衛生な飼育環境も手伝い、アメリカでは命を落とすほどの食中毒が年々増えている。テクノロジーが進むほど安全になるはずの食品製造は、加工工場が巨大化し過ぎたために危険な場所になってしまった。
ファストフードなどの高カロリー食品の元をたどると、そのほとんどは、このような国の助成金により作られた材料にたどり着く。販売価格が安いのはそのためだ。事実、肥満や糖尿病の発症率と所得水準には大きな関連があると言われている。薬代は高くつくために、彼らは「健康のために、薬を買うか、野菜を買うか?」という究極の選択を迫られている。
オーガニック・フードの台頭 ~消費者が求めれば変わる~
一方で、有機農法を実践しているJ・サラティンのような農家もいる。彼は広い屋外の農場に牛を飼い、牧草を食べさせ、手作業で肉をさばいているが、決して効率は悪くないという。人々が食品の作られる過程を知らな過ぎることが問題なのだと彼は言う。「ハイテク漬けになって利益や効率重視になると、家畜を商品としてしか見なくなる。農家は美味しい食品を作ることを目標にすべきだ。」
こうした動きを受けて、アメリカでもオーガニック・フードが注目を浴び始めた。大手スーパーにもオーガニック棚が出来るほどの人気で、有機農家と提携する巨大企業は急増している。大手スーパーでも、消費者が求め、売れるものであれば、必ず仕入れるのだ。
自分たちで食品の安心と安全を守る
安い商品の代償である、コストダウンのために不当に扱われる労働者のことを、種からスーパーまでフードシステムを支配している巨大企業のことを私たちは知らない。重要なのは目の前にある商品の値段では無い。食品のルーツを知り、自分の食生活を見直す必要がある。食べものの価値を決めているのは、巨大企業や政治家に見えるかもしれないが、結局は私たち消費者なのだ。
私たちは自分たちで食品の安心と安全を守るしかない。
第82回アカデミー賞(2010年)長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品、映画「FOOD,INC.」(フード・インク)のパンフレットのStory部を全文掲載いたしました。
当コンテンツは、我々の食生活の実態・問題を鋭く浮き彫りにしている映画「フード・インク(FOOD,INC)」に共感し、当映画資料を元に作成いたしました。段落タイトル、及び黄色のハイライトは、リラクゼンセレクト側で付加しております。