抗酸化物質とガンー再び両刃の剣か?
これまで見てきたように、ガン細胞の中では、正常な細胞と比較して、ビタミンEを含む抗酸化物質の量的レベルが高いのが普通です。何か特別の原因で、ガン細胞は活性酸素レベルを低く保つ理由があるに違いありません。その理由の1つは、ガン細胞の高い分裂速度がDNAの活性酸素ダメージに対して特に脆くしていることでしょう。またその他の理由としては、多不飽和脂肪酸を安全に貯える能力の欠如にあろうと考えられます。
このことはすなわち、1度イニシエーションが始まってしまえば、ガン細胞を殺す目的で投与する抗酸化物質サプリメントが、反対に、活性酸素ダメージからガン細胞を守るための能力を、ガン細胞に対して追加付与するという結果になってしまうことを意味します。この可能性を完全に払拭することはできません。例のフィンランドのATBC報告書を思い出してください。喫煙者の肺ガンを18%増加させたと報告された「例の」レポートです。被験者がベータカロチンを抗酸化補助食品として投与されたあの実験結果です(第六章参照)。実験計画自体の基本デザインが問題視されたあのフィンランド・レポートです。もし、あの実験に意味があるとして、実験計画の設計のまずさ以外にもいくらでも説明は可能です。最も説得力のある説明は、やはりすでに述べたように、実験が始まった時にはすでに被験者の多くにイニシエーションの完了したガン細胞が存在していたのであり、その段階で投与された抗酸化物質が、出来てしまった腫瘍の成長を促進したのだ、という説明です。
クレイトン博士の「英国流医食同源」 ~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~(翻訳版)の内容を転載しています。
当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~』の内容を転載しております。