喫煙と短命の相関関係
たとえば、喫煙等によって体に対する活性酸素の負荷が大きくなる(または自分で大きくする)場合も同じ結果になります。喫煙者のおよそ半分が天寿を全うすることが出来ないのはそのためです。事実、単純に計算してみると、タバコを1本吸う度に、それが発生させる活性酸素のために余命がおよそ10分短くなるということになります。仮に読者が、1日に20本のタバコを吸うとすれば、1日に200分です。1ケ月に600分、そして1年に7万2千分、つまり1年365日の中から50日分だけ余命の引き算です。およそ2ケ月弱も損をするわけです。それなりに長い人生のすべての時間からおよそ13%の引き算をどのように考えるかは、もちろん読者それぞれの自由です。それなりの「質=Quality of life」の伴わない人生の13%増加分をむしろ苦痛と考える人もあるでしょう。一方、人生の晩年にさしかかりつつ、それでもなお成し遂げたい事を明確に、具体的に持っていて、その達成に全エネルギーを傾注している人もあるでしょう。それもこれも個人の自由です。筆者としては、このような人生に対する読者の姿勢についてあれこれ命令する立場にはありません。ただ、この喫煙によって失う13%を残念に思う人は、即刻喫煙習慣を捨てるべきと考えるだけです。
喫煙と短命との相関関係は、統計学者によって発見されましたが、それが説得力を持つようになったのは活性酸素の理論が世に出てからです。つまり、心臓疾患及びガンと喫煙の関係が統計的に説明されるようになってからのことです。活性酸素負荷が増加して、そのために、ビタミンCのように体内に蓄積された抗酸化物質の貯金が「ガス欠」になり、そのために寿命が短くなることが明らかになったわけです。喫煙者あるいは受動喫煙者に典型的に見られるように、血中ビタミンCレベルが通常値以下に落ちる理由です。こういった人々の多くは、壊血病スレスレのビタミンCレベルとさえ言えましょう。これは、動脈の内壁に損傷を起こし、まさにアテローム性動脈硬化の「引き金要因」です。それだけでなく、活性酸素は、血中の脂質を酸化あるいは酸敗させます。そして、損傷を受けた動脈内壁にじゅく状斑を作るのは、こうして発生した過酸化脂質がその原因と言われています。喫煙者に心臓発作が多いのはこれが理由です。しかも、それだけでなく、活性酸素は喫煙者の体内の遺伝子にも損傷を与え、それがやがてガンを引き起こすような変異になる。すなわち、喫煙とガンとの因果関係です。
クレイトン博士の「英国流医食同源」 ~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~(翻訳版)の内容を転載しています。
当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~』の内容を転載しております。