抗酸化物質の必要量は?
筆者の信ずるところでは、ここにきてもはや補助食品としての必要性をうんぬんしている場合ではないと考えます。アメリカ内科医研究会が発表しているところでは、ビタミンEの大量投与は栄養的に充分満ち足りた状態の人々にとってさえも心臓疾患のリスクを半減するとまで言っています。栄養学者がいま直面すべき真の問題は「どの抗酸化物質をどれだけ摂取すべきか」という質問に答えることだと筆者は考えます。
ビタミンEとビタミンCの摂取量についてなにがしかの指標となる臨床例はあるものの、数は限られています。加えて、SONA(推奨最大摂取量)という概念を生み出したアラバマ大学における研究がありますが、これも研究対象となった人々の日常の食習慣によって大きく左右されます。SONAは確かに調査の対象となったアメリカ人に対してのベスト摂取量を示してはいるでしょう。しかし、SONAをそのままで人類全体に対して一般化して良いものでしょうか? 本当の「推奨すべき最大摂取量」はSONAより上なのでしょうか、下なのでしょうか? 過剰摂取という問題は本当にあるのか無いのかが問題の大きな焦点です。
色々な問題はあり得ます。しかし、今のところ証明は不可能です。抗酸化物質の数はあまりにも多いのです。それぞれのベスト摂取量を定めるには何百、何千の臨床テストが必要です。それらの「組み合わせ」となると気が遠くなるほどの数になります。しかも、長期間摂取量はおろか短期間摂取量についてさえ、その確認には時間が掛り、いわば限りなく不可能に近いのが実情です。製薬産業はこうした研究には資金援助をしません。特許がとれず、利益にならないからです。従って、ベスト摂取量とその組み合わせによって長寿と健康を求めるためには、科学者達の何世代にもわたる根気のいる研究が必要とされ、その何世代かの間は残念ながら「人間モルモット」が続くのです!
完璧な証明は出来ないまでも、そして数は限られているにせよ、証拠がないわけではありません。少なくともガイドラインとしては役に立ちます。マウスのような実験動物に抗酸化物質を大量投与した場合に寿命が延びることは確認されています。ビタミンQ(コエンザイムQ10)の場合はこの寿命の延長は50%にも達します。残念ながらその事実を、そのままヒトに対して当てはめて良いか悪いかが分からないのです。マウスとヒトを比較すると、抗酸化物質による生体防御システムはヒトのシステムの方がマウスのシステムより優れています。ヒトの防御システムは他のほとんどすべての動物が持つ防御システムより優れています。だからこそ、ヒトの寿命の方がマウスより長いのです。従って、マウスと比べるとヒトのシステムは、もしかしたらもはや改良の余地がないほど進んでしまっているのかも知れません。
クレイトン博士の「英国流医食同源」 ~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~(翻訳版)の内容を転載しています。
当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~』の内容を転載しております。